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いにしえの美女 [西洋史・オリエント史]

いにしえの美女

Birth of Aphrodite by Alaxandre Cabanel (painted in 1863)
(この絵は一番下のリンクをクリックすると見ることができます)

「また、このアフロディテの絵ですか?ロブソンさんはよほどこの絵が気に入っているようですね」
「分かりますか?」
「これだけ何度も見せられたら分かりますよ」
「ジューンさんが何度と言うほど貼り付けていませんよ。これが3度目です」
「3度も見せられたら、充分すぎるほどですよ」
「ジューンさんは、こういう絵が嫌いですか?」
「嫌いじゃないですけれど、こうたびたび見せられると見飽きますよ」
「見飽きますか?」
「もちろんですよ」
「僕は何度見ても見飽きませんよ」
「そのうち見飽きますよ。それで、この絵とアメニアさんは、どのような関係があるわけですか?」
「実は、この絵からインスピレーションを受けてアメニアさんを描いたんですよ。それが次のイラストです」

(上のイラストは一番下のリンクをクリックすると見ることができます)

「また、この絵ですか」
「この絵も見飽きましたか?」
「見飽きたわけではないですけれど、ちょっとどぎついですよ」
「こういう絵は嫌いですか?」
「ロブソンさん、もう、絵のことはいいですから、このアメニアさんのことをお聞かせください」
「分かりました。前にも書いたことだけれど、この“ラピスラズリと美女アメニア”というのは僕が英語で書いた“Erotica Odyssey”の第1章なんですよ」
「ええ、聞きました」
「英語では“Lapis lazuli and Courtesan”と言う題名が付いています」
「と言うことは、日本語の題名ではCourtesanを“美女アメニア”としたわけですね」
「そうです」
「どうしてですか?」
「Courtesanのうまい訳がどうしても浮かんでこないんですよ」
「高級娼婦ではないのですか?」
「うん、確かに、そういう風に訳すのが一般的だと思う。たまたま、僕が良く使う“英辞郎”で調べてみたら、なんと“売春婦”と出ているんですよ。とてもじゃないけれど『ラピスラズリと売春婦アメニア』とはできませんよ」
「だから、『ラピスラズリと高級娼婦アメニア』にすれがいいじゃないですか?」
「でもね、僕には高級娼婦という言葉がどうしても馴染めないんですよ」
「どうしてですか?」
「ジューンさんはoxymoronという言葉を知っているでしょう?」
「ええ、知ってますよ。日本語で言うと。。。」
「英和辞典には撞着語法って書いてあるよ。でも、これじゃあ、何のことだか分からないよね。例えばcruel kindnessという語句がある。 cruelは残酷なとか無慈悲なという意味だから、親切という意味のkindnessとは全く正反対の意味だよね」
「そうです」
「だから、普通の使い方では、このような用法は可笑しいわけですよ。普通なら、sweet kindnessと言うような組み合わせですよ。甘いやさしさ。これなら、問題がない。でも、時にはcruel kindnessがぴったりするような状況がある」
「例えば?」
「そうだね。。。例えば、子供が皿を5,6枚割ってしまったとします。本来ならば母親からしかられるべきなのに、妙にやさしくされたりすると、かえって心が痛むもんですよね。こういう時のやさしさがcruel kindnessですよ。でしょう?」
「まあ、そのようなことでしょうね。それで、ロブソンさんは、この高級娼婦がoxymoronだと言いたいわけですか?」
「その通り」
「そうでしょうか?昔の吉原に関する本を読むと、娼婦には階級があったと書いてありますよ。だから、高級娼婦や低級娼婦が居たということは事実でしょう?」
「そう言われてみれば、そうなんだけれど。。。」
「だから、高級娼婦という言い方に不自然なところはないと思います」
「そうかもしれない。でも、僕にとっては娼婦は娼婦なんだよね。昔の吉原には、確かに、娼婦には階級があった。だから、高級な娼婦という言い方も不思議ではないかもしれない。でもね、僕には高級な泥棒とか低級な泥棒と言うのと同じように聞こえるんですよ。泥棒に高級も低級もないよね。泥棒は人間として低級なんですよ」
「つまり、娼婦は高級娼婦でも、人間として低級だと。。。そういうことですか?」
「僕はそういう印象を持つんですよ。だから、高級な娼婦アメニアとしても、アメニアさんが低級な人間のイメージとして登場することになる。それでは、この物語の中のアメニアさんのイメージとは全くかけ離れてしまうんですよ。それで、高級娼婦という日本語は使いたくなかったんですよ」
「でも、それはロブソンさんの個人的な受け止め方でしょう?他の人には違和感はないかも知れません。少なくとも私には違和感がありません」
「ジューンさんは日本で育っていないから、娼婦という言葉のイメージが英語のwhore程悪い印象を与えないのかも知れない。でも、僕にとって、娼婦という言葉はwhoreと同じ響きを持つんですよ。だから、高級娼婦を僕の頭の中でイメージするとhigh-class whore という響きになるんです。これは、とてもじゃないけれど、いただけないんですよ」
「それもロブソンさんの個人的な解釈の仕方ではないのですか?」
「分かりました。ジューンさんが言うように、僕の個人的な受け止め方だとしましょう。でも、それとは別に、もうひとつ考えなければならないことがあるんですよ」
「なんですか?」
コリンスのページで僕はすでに話したことなんだけれど、アクロコリンスにあるアフロディテ神殿でお勤めをした女たちは、娼婦というより巫女さんのような役割を持っていたと言ったでしょう。覚えていますか?」
「ええ、確かにそのように聞きました」
「クレタでも同じようなことが言えるんですよ。だから、娼婦という言葉を使うと本来のイメージが伝わらなくなってしまう。僕としては、この巫女的な要素を強調したいわけなんです。そのために、高級娼婦を使わずに美女アメニアとしたわけなんですよ」
「アメニアさんもアフロディテ神殿でお勤めをしたのですか?」
「いや、アフロディテ神殿ではなかった。でも、似たような神殿で大巫女さんになるための教育を受けた」
「似たような神殿というと。。。?」

“The palace of Knossos (クノッソス宮殿想像図)”
(この絵は一番下のリンクをクリックすると見ることができます)

「上の想像図は“クノッソス宮殿”と呼ばれているのだけれど、学者によるとこれは宮殿ではなく神殿だったと言う人も居るんですよ」
「つまり、アフロディテ神殿ですか?」
「いや、アフロディテと言う名前で呼ばれていたとは思わないけれど、クレタ島の女神であったことに間違いはないでしょう。むしろこのクレタ島の女神が西に伝わってキュテラ(Cythera)島の女神になったと僕は考えていますよ。つまり、キュテレイア(Cytheria)と呼ばれるようになったんです。これがアフロディテの別名ですよ」
「でも、キュテレイアはフェニキア人がもたらした女神だとロブソンさんは言ったじゃありませんか」
「そのとおり。フェニキア人の女神とクレタ島の女神が仲良く手を結んだと僕は見ていますよ」
「つまり、2つの女神が一緒になってキュテレイアと呼ばれるようになり、それがギリシャ本土でアフロディテと呼ばれるようになったと言うわけですか?」
「まさに、その通りですよ」
「そのように歴史書に書いてあるのですか?」
「いや、僕が言い出したことです」
「学会では認められていないのですね?」
「残念ながら認められていませんよ。僕はミノア文明学会の会員ではありませんからね。しがない歴史バカに過ぎませんよ」
「学会員になって発表すればいいじゃないですか?」
「何もそこまでして発表する必要はないですよ。やがて、この説を裏付ける遺物が出土すると僕は信じています。現在は、裏付けるものが何もないから、発表したって意味がありません」
「それで、アメニアさんは大巫女さんになるはずだったのですか?」
「そうなんですよ。10歳から12歳になると、大巫女さんになる女の子が10数人集められて、将来大巫女さんになるための教育がなされたんです。アメニアちゃんもその中の一人に選ばれたわけですよ」
「それが、どうしてcourtesanになってしまったのですか?」
「その辺のことが、僕の小説の中で語られているわけですよ。そこが面白いところなんです」
「そのことはここでは説明してくれないのですか?」
「それは、あとのお楽しみと言うことですよ」
「なんだか、もったいぶりますね」
「これはあくまでも導入部分ですからね。前書きがずいぶん長くなりましたが、これだけのことを話さないと、今から3500年前の話を急にしたって、面白くもなんともないですよ。でしょう?」
「言われてみれば、確かにそうですね。私も、アメニアちゃんが12歳で大巫女さんになる教育を受けたけれども、大巫女さんにはならなかった。たぶん、その辺になんとなく恋愛だとかセックスが絡んでくるような予感がしています」
「でしょう?これだけのことを話してくれば、たいていの人が興味を持ちますよ。クレタ島もずっと日本に近づいてくると言うものです」
「じゃあ、これから、いよいよ本文に入るわけですね?」
「そうです。期待してください」
「分かりました。大いに楽しみにしています」



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http://www.geocities.jp/barclay705/crete/lapis7.html

きれいな写真がたくさん貼ってあります。ぜひ読んでみてください。


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