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自分に自信と誇りが持てない日本人 [日本人・日本文化]

自分に自信と誇りが持てない日本人

「デンマンさん、日本人は本当に自分に対して自信と誇りが持てないのですか?」
「もちろん日本人すべてが自信と誇りを持っていない、と言うつもりはありませんよ。ただ、欧米人と比べて自分というものを前に出そうとしない所がありますよ」
「確かに自分の意見をはっきりと述べない人が多いですよね」
「ジューンさんもそう思うでしょう?」
「でも、そのことと自分に自信と誇りを持つことと関係があるのですか?」
「日本人が自分を前に出そうとしない、自分の意見をはっきりと人前で言わない、というのは日本人の気質にも関係するけれど、自分自身に自信と誇りを持つことができない、という事とも大いに関係があると思うよ。この事をジューンさんに分かりやすく説明するために数年前に起こったある殺人事件のことをここで話そうと思う」
「殺人事件ですか?その事件が日本人の自信と誇りに関係あるのですか?」
「ちょっと見ただけではあまり関連性がないと見えるけれど、じっくり見てゆくと大いに関係がある」
「どのような事件なの?」
「もう、多くの日本人の記憶から忘れ去られているかもしれない。春奈ちゃん(2歳)殺害事件というのがこの事件の呼び名ですよ。またの名を“お受験殺人事件”。 この名前を聞けば思い出す人もいるかもしれない」
「2才の女の子が殺されたの?どうして?」
「この事件は平成11(1999)年11月に起きたんだ。加害者は山田みつ子という当時35才の主婦。その動機や背景事情は、いろいろとマスコミでとりざたされた」
「まだ2才という、いたいけな子供をどうして殺したりしたの?とても信じられないわ」
「春奈ちゃんには5才のお兄ちゃんがいる。その子と加害者の息子がおない年で、同じ幼稚園に通っていたんだ。ところが春奈ちゃんのお兄ちゃんは、なにかにつけて良くできるのに、加害者の息子はできが良くなかった。母親どうしのサークルでは、そのことが加害者に劣等感を植えつけた。しかも加害者の目には春奈ちゃんのお母さんが彼女をのけ者にしているように思えた」
「さか恨みじゃないの?」
「そんなわけで二人の母親は仲が悪かった。そんなある日、二人は激しい口論になった。とにかく加害者はもう我慢がならない限界にまできていた。本来ならば春奈ちゃんの母親を殺すところなのだが、それができずに憎悪の対象が春奈ちゃんに向けられたらしい」
「そんな!それは、あまりにひどすぎるでしょう。子供には何の落度もないわ」
「11月22日、東京の文京区にある音羽幼稚園から春奈ちゃんを連れ出し、近くの公衆便所へ連れてゆきスカーフで絞め殺したんだ」
「いやだわ!普通の神経の持ち主には、とてもできないわ。被害妄想に陥っていたんじゃないの?」
「そうかもしれない。しかし裁判を受けられないほどの精神異常者ではなかった。死体を旅行カバンに詰めて静岡県の田舎にある実家へ行き、裏庭に穴を掘って、そこへ春奈ちゃんの遺体を埋めた」
「計画的な犯行だったのね?」
「そういうことのようだ。彼女の裁判は世間の注目を集めた」
「それはそうでしょう!そんなひどいことをしたのだから」
「58人だけしか収容できない傍聴席に、なんと800人近くの人が押し寄せたんだ」
「一体なぜ、そんなひどい事したのか、本当に知りたかったんでしょう?小さい子を持つ親にしてみると他人事ではないわ」
「そうかもしれない。しかし、ずいぶんと暇な人がいるんだね?」
「それで、本当の動機はなんなの?」
「加害者は春奈ちゃんのお母さんとの精神的なもつれ、不和だと言っている」
「もっと深い理由があるんでしょう?」
「しかし、裁判では加害者はあまり詳しいことを言ってないんだ」
「でも、この話しを持ち出したからには当然『お受験』との関わりがあるんでしょう?」
「もちろん!実は春奈ちゃんは有名な幼稚園の『お受験』に合格していたんだ。一方、加害者の娘は落ちてしまった」
「加害者はひけめを感じ、劣等感に悩まされていたわけね?」
「たぶん、そうだと思う」
「でも、そんなにしてまで有名幼稚園に通わせねばならないの?」
「一部の母親はそう思っている。ジューンさんは受験戦争ということ聞いたことあるだろう?」
「ええあるわ?それに、デンマンさんと、そのこと話したことあるじゃない」
「そうだった。何年か前は一流大学を出れば一流会社に就職できた。でも今は、一流大学を出ても、昔みたいに絶対安泰な会社はなくなっちゃった。一流会社も倒産する時代だからね」
「それなのに、まだお母さんたちは幼稚園から子供に一流のところに行かせようとするの?」
「日本のほとんどのお母さんたちは、それほどの教育ママではない。ただ東京、横浜、大阪などの大都市に住んでいるお母さんたちの中には、とりわけ教育に熱心な人たちがいる」
「それ、本当に子供のためを考えているのかしら?母親自身の見栄じゃないの?」
「ジューンさんもだいぶ日本人の心が分かるようになったんだね?」
「それはそうよ。最近、日本人のことについて書かれた本をかなり読んでいるもの。でも、あたしは、受験戦争というのは大学へ入学する時だけだと思っていたわ」
「そうじゃないんだ。幼稚園からある。もちろん、だい部分の親たちは、そんなに有名な幼稚園に子供を入学させるわけではない。近くの幼稚園や保育園で充分だ。義務教育制度があるから入学試験など受けずに誰でも小学校や中学校にゆける」
「それなのに、幼稚園から入学試験を受けさせて有名校へやる親たちがいるのね?」
「そうなんだ。数は少ないとはいえ、そのための準備を引き受ける『お受験』のための塾がかなりある。そのような塾がやってゆけるというのだから、かなりの親たちが子供を塾に通わせていることになる」
「いったい幾らぐらいかかるの?」
「参考までに、ある『お受験』準備サイトの御案内情報をここに載せてみるね」

●どうしても合格させたいコースは2歳からあります。
 (入学金7万円・月謝2万円)

●完全必勝コースは月謝10万円(入学金別)。
 塾生は模試の費用が割引されます。

●どんな様子か体験したい方は冬季講習会や
 模擬テストを受けることができます。

●春休み・夏休みの集中コースもあるので参加するのも一つの方法でしょう。

●毎月ある模擬テストは1回8千円、4回2万8千円、8回4万8千円です。

●春季講習会は6日で7万円、3日で3万円。塾生には約2割引の特典があります。

●入試直前講習、1回体験教室もあります。
 しかし、定員があるので事前申込みが必要です。

●特定の有名私立校コース、特別強化コースもあります。入会金7万円、月謝6万円。

●国立小週2回コースは入学金7万円、月謝5万円です。

●必勝コースなら入学金・月謝・特別講習・強化コース(合宿)と
 模擬テスト・直前コースなどあわせて1年間で約150~200万円ほど必要でしょう。

「どうですかジューンさん?」
「なんだか、すごいですね!どうも、うまい言葉が見つからないわ。あきれるというか、驚きとういか……カナダの幼稚園は只ですよ。もちろん教育委員会が運営しているんだけれど。幼稚園のための塾もないし、特別な教育費は全くかからない」
「日本もそうなるといいんだけれど。しかし、そうなったところで、教育ママゴンは依然として私立の有名幼稚園へ子供をやるだろうと思う」
「どうして?」
「何年か前は一流大学を出れば一流会社に就職できた。だから一流会社を望むなら、一流幼稚園から始めることも理屈に合う。でも今は、一流大学を出ても、昔みたいに絶対安泰な会社に就職できなくなった。前にも言った通り、一流会社も倒産する時代だからね」
「それなのにどうして?」
「ジューンさんが言ったように、親の見栄が大きな理由だとおもう。一流大学を出たところで何の保証があるわけでもない。それでも一流幼稚園から始まって、一流大学を出させるということは、自分が果たせなかった夢を子供に託すという意味があると思う」
「しかし、それにはずいぶんと時間とお金がかかるでしょう?」
「しかし母親たちはそのことに意義を見い出している。有名幼稚園に子供が受かったということが親には喜びであり誇りとなる。その当時『お受験』という映画までできた。このことからみても『お受験』というのは多くの日本人にとってかなりの関心事なんだ」
「でも、有名幼稚園に入っても、子供が果して一流大学を出るかどうかは全く分からないでしょう?それなのに200万円も出して塾へやるだけの値打ちがあるのかしら?」
「ジューンさんはブランド思考ということを知っている?」
「ええ、聞いたことあるわ。イタリアへいって、GUCCIのハンドバッグを買ってそれを持ち、いい気分にひたる。そういうことでしょう?」
「その通り」
「カナダ人やアメリカ人にもそういう人がいないわけではないけれど、日本人はそれが特にひどいわね。あたしなんかブランド品なんて一つも持っていないわ。安くていいもの、ただその一言につきるわ!だいいちGUCCIのハンドバッグを持ったからっていい気分になれないし、そんなものを持ったところでステイタス・シンボルにはならないもの」
「たぶん多くの日本人が自分に対して自信を持てなくなったんだと思う。自分に一体誇れる物があるだろうか?多くの人がそんな風に自問しているんじゃないかな?」
「それで?」
「てっとり早く誇れる物を持つのはブランド品を買うことだ。ブランド品を持っていれば他人が羨ましがるのではないか? 生活が豊であることを認めてくれるのではないか? そんな風に考えてブランド品を買うのではないだろうか?」
「そんなに日本人は単純なの?」
「なかには、そういう人もいる。しかしブランド品では満たされない人もいる。そういう母親はどうするかというと、有名幼稚園へ我子をやる。ブランド品にお金を使うよりも有意義だと思うからだ」
「でも結局ブランド指向と変わりないでしょう?」
「でも『お受験』に夢中な親にはそのことが分からないに違いない。そんなわけで、相変わらず子供を有名幼稚園にやる親があとをたたない」
「有名幼稚園って、本当に良い幼稚園なの?」
「中には良い幼稚園もあるだろうとは思うけれど、本当に幼稚園の良さを理解してん入園させている親が一体何人いることか?僕は疑問に思っている」
「たとえば、どういう幼稚園が有名なの?」
「お茶の水大附属幼稚園などは知名度がある」
「どんな利点があるの?」
「学校の授業で脱落しなければ、女の子はお茶の水附属高校へ無試験で入学できる。男の子の場合は、中学3年で放り出される」
「どうして?」
「お茶の水附属高校は女の子だけ。しかし入試を受けずにエスカレーターに乗るように上級学校に進むということは生徒にとって楽ではない」
「なぜ?」
「幼稚園とか小学校から無試験で上がってくる生徒は、中学入試、高校入試を経て入ってくる秀才には、とてもじゃないが太刀打ちできない。なかには、みじめな思いで学校生活を過ごさないといけない生徒もでてくる。それに国立の学校(教育学部の実験校)というのは、受験対策など全然しないのが普通。担任の教師は実験授業で忙しいか、出張不在。こんな状況下でもなおかつ大学入試において抜群の成績を上げるのは、ひとえに高校入試や中学入試で学力の高い生徒を集めるからなんだ」
「お茶の水大学というのは女の子にとっては憧れなんでしょう?」
「ある種のブランドとして考えている親たちもいるらしい。でも、お茶大ブランドはあてにならない。それは、自信のない男子大学生は、自分より明らかに優秀な女子学生を好まない。花嫁修行のつもりで娘を大学にやるというのは時代錯誤もはなはだしい」
「それでも、お茶の水大附属幼稚園へ入園させるという親たちがいるわけね?」
「もちろん、なかには教育の内容の良さを理解して入園させるという親たちもいるかもしれない。しかし、問題なのは、娘のために『お得』だとおもって『お茶大附属』を『お受験』させる親がいることだ。『お茶大附属・父母サロン』に親たちが憧れを持ち、夢を見ようとしているなら、それは見栄、虚栄心以外の何ものでもない。それは不幸の始まりだとしか言いようがない」
「つまり、自分に自信と誇りを持つことがどういうことなのか?そういうことをじっくりと考えてないってことなのね?でしょう?」
「そういうことです」
「日本人の精神レベルが向上しないと、また第二の春奈ちゃん事件が起きるかもしれない、ということですね?」
「僕もそう思いますよ」


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コメント 1

matt

日本人が妙に小金持になっていて、ブランド品も買えるし、子供の教育にもお金をかけられるってことですね。欧米人に比べるとあまり合理的な価値観でないのは確かだと思います。
日本人が自分の意見を言わないのは、他の人と違うのは悪いこと、というような社会通念がいまだにあることが大きな要因だと思います。アメリカなんかはまったく逆に、人と違うことに価値がある、感じがしますよね。ホリエモンや村上ファンドなんかに反発するのも、今までのやり方と違う、ってことがベースにあって、それなりに影響力のあるスポーツ新聞やバカなレポーターなんかが騒ぐのも同じように見えます。いずれにしても、そんな社会で小さい時から人と違うことを言ったりしないような教育を受けて、大人になっても意見のない人間になってしまうのです。
by matt (2005-10-07 11:28) 

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